クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「持月さん、聞こえる?」

 インカムから駅長の声がする。
 「はい!」と応答すると、駅長は慌てた声で私に告げた。

「到着した公用車にトラックが突っ込む事故があった。乗っていた全員は降りていて、トラック運転手以外は無事だそうだ」

 ほっとして、体の震えが治まった。
 けれど、駅長の声は続く。

「式典も出発も予定通りに行う予定だが、現場が混乱している。臨機応変に対応できるよう、英語が話せる君に、大臣たちの案内を任せたい」
「でも、この場所が――」

 私は周りを見回した。
 私がやり取りをしていることに気付いた報道陣が、こちらに鋭い視線を向けている。

「大丈夫だ、映茉。ホームのことは俺に任せろ」
「でも――」
「舐めんな。俺だって駅員時代があるんだから」

 旭飛に笑顔とグーサインを向けられ、私は「はい!」とインカムをとばす。
 旭日に手短に状況を説明すると、私は改札階へと急いだ。
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