クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 改札を出て、駅舎の階段を急いで降りていく。駅前のロータリーは、悲惨な事故現場と化していた。

 黒塗りの高級車に横から突っ込むようにトラックが停まっていて、その近くから救急隊員がトラックの運転手と思わしき人を運んでいる。

 そんな状況に顔を歪ませたが、視線の先に祐駕くんが見えて、はっとした。
 彼はこちらに背を向け、駅舎の階段の下にいる大臣たちに、駅長の言葉を通訳していたのだ。

 けれど、次から次へと対応に追われている。二人で一役は大変そうだ。

「駅長!」

 叫べば、駅長はホッとした顔でこちらを振り返る。

「伝えてほしいことはインカムで飛ばすから。とにかく、今は状況説明を順にしてほしい」

 コクリと頷くと、駅長は階段を登っていった。
 それから、大臣たちの方を振る。
 駅長からバトンタッチした私に、皆の注目が集まっていた。

 どうしよう、責任重大だ……。

 緊張で鼓動が早くなり、思わず足が怯む。けれど。

「Mrs. Mochizuki!」

 朗らかな声で私を呼ぶ誰か。この声の主は――

Mr. Friedberg(フリートベルクさん)?」
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