クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 笑顔で私を歓迎する、ドイツ環境大臣のフリートベルクさんがいた。

『彼女がいれば、もう安心だ』

 フリートベルクさんがそんなことを言うから、周りの人たちの顔にも笑顔が浮かぶ。祐駕くんもこちらを振り向いて、易しい笑みを浮かべてくれた。

『ここからは、私が皆様をご案内いたします』

 毅然として言えば、大臣たちは安堵したような表情を浮かべる。それで、幾分ホッとした。

 けれど、インカムから聞こえてきたのはまだホーム上が混乱しているという駅長の声。テロの可能性も意識し、ホーム上を一度、警察官が調べることが決まったそうだ。

 目の前の羨望の眼差しに、私はどうしようと頭がこんがらがる。駅前は警察やら救急やら野次馬やらでガヤガヤしているはずなのに、何も聞こえないくらいに必死に頭を巡らせた。

 何を言えばいい?
 どうすればいい?

 必死になる私。背を伝う冷や汗。
 もう、どうしたら……。

「映茉」

 そんな半ばパニックになる私の名を、祐駕くんの優しい声が呼んでくれた。
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