クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「大丈夫だ。英語が伝わらない人には、俺が個別に対応する」

 ぽんと肩に手を置かれる。
 振り向けば、優しく微笑む祐駕くんがいた。

「俺たちも、中の様子を知りたいんだ。ゆっくりでいい。説明してくれるか?」

 その視線は、まるで「大丈夫だ」と言っているよう。

 そうだ、私がパニックになっても仕方ない。
 大丈夫。いつも通り、丁寧に、ゆっくりと。

 私は一度深呼吸をして、それか言葉を紡ぎ出した。

『只今駅構内は混乱しております。こちらは一般の方は入れないように規制しておりますので、皆様もうしばらくこちらでお待ちください。申し訳ございません』

 言い切り、詳細を紡ぐ。すると、大臣たちはそれぞれ皆ほっとしたような顔を見せた。その様子に安堵し、私は祐駕くんの方を向く。

「ありがとう。祐駕くんのおかげ」
「俺は何もしていない」

 祐駕くんはそう言ったけれど、力をくれたのは祐駕くんだ。
 もう一度「ありがとう」と伝えると、祐駕くんは笑顔とともに、私の肩をぽん、と、労うように軽く叩いてくれた。

 それから祐駕くんは、個別に状況を聞きに来る大臣たちに対応する私の横で、英語以外の言語で対応してくれた。
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