クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 それでも間延びしてしまうと、待っていただいている大臣たちの表情が曇っていくのを感じた。
 今、ここの責任者は私だ。どうしよう、どうしたら――。

 迷っていると、個別対応を終えたらしい祐駕くんが私の肩をぽんと叩いた。

『朝明台駅は、どのくらいの人が利用しているんですか?』

 わざとらしい、大きい声。しかも、英語。
 祐駕くんは、大臣たちの注目を集めようとしてくれているのだ。

『一日の利用人数は、――』

 私は英語で答えながら、朝明台駅の主要駅としての役割と、駅員としての責務を話す。
 祐駕くんがインタビュー形式にしてくれるので、話しやすい。大臣たちもこちらに耳を傾け、時折質問を飛ばしてくれるくらいだ。
 フリードベルクさんも、『さすが日本の駅員だ』と褒めてくれる。

 さすがなのは祐駕くんだ。
 私を巻き込み、大臣たちをなごやかな空気にしてくれる。
 さすが、外交官さんだ。

 私は質問を向けてくれる祐駕くんの笑みに、「ありがとう」と感謝の気持ちでいっぱいだった。
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