クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「咲多は高校時代を知っているから、信頼を置けると分かっている。駅員姿を見て、あの頃と変わらない対応力もあると判断した。それから、英語も喋れるんだろ? 名札の下についてた。英語対応可能だと」

 持月くんは指で、自身の右胸の辺りを指差す。

 確かに、制服の右胸につけた名札には【English】の札がついている。これは、大川電鉄が日本語以外で対応ができる駅員に配布しているもので、昨今増えている海外からの旅行客にスムーズに対応できるようにと始めた施策だ。

 まさか、持月くんがそんなところまで見ていたなんて。

 でも、ちょっと待って?

「英語って結婚に関係ある?」
「俺は外交官だからな、万が一のことも考えて、だ。だが別に、ドイツについてきて欲しいというつもりもない。結婚さえしてくれればそれでいいんだ。咲多も、駅員の仕事は辞めたくないだろう?」
「まあ、辞めるなんて考えたこともないけど……」

 『結婚さえしてくれればそれでいい』って。
 外交官さん(というか持月くん)って、〝結婚してこそ一人前の男〟みたいな考え方の持ち主なのかな?

「俺への礼がしたいという咲多からの留守電を聞いて、だったらと提案させてもらったんだが」

 つまり、人助けのお礼に結婚しろってこと!?
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