クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 その後、無事に式典が行われることになり、私は大臣たち全員をホームまで案内した。

 それから、私は水素電車の先頭車両へ向かった。運転士に、今日の最後のミッションの、挨拶をするために。

「旭飛」

 旭飛はもう運転室に乗り込んでいて、出発の時を待っていた。声をかけると、旭飛はすぐに窓を開けてくれた。

「お、映茉。対応、終わったんだな」

 うん、と返せば旭飛はにぃっと微笑む。

「お前の落ち着いた対応、やっぱりすげえよ。さすが、駅員の鏡だな」
「ありがと」

 屈託ない笑みが、無性に嬉しい。

「旭飛もありがとう。運転前で気を張ってるはずなのに、あんなに動いてくれて」
「おう! 俺だって一応、元駅員だからな」

 旭飛はそう言って笑う。けれど、彼の本業はここから先だ。
 だから、私は精一杯のエールを送る。

「頑張ってね」
「おう! 映茉に負けないように、頑張るわ!」

 互いに敬礼を切っていると、旭飛に視線で背後を示される。振り返ると、祐駕くんが立っていた。
< 230 / 251 >

この作品をシェア

pagetop