クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「さっきの駅下での対応も、素晴らしかったわ。夫婦で揃ってあんな風に対応できるなんて――」

 エミリアさんの言葉は、少々棘がある気がする。
 素直な気持ちで受け取れないでいると、祐駕くんが「喋りすぎだ」とエミリアさんを止めてくれた。

「映茉が困っているだろう。彼女は、これからまだ仕事があるんだから」

 祐駕くんの言葉に「そうね、ごめんなさい」と言葉を止めたエミリアさんは、先頭車両を撮影するためなのかホームの先端の方へ向かってしまった。

「最後の仕事、頑張れよ」

 エミリアさんの登場で胸が少しざわついたけれど、祐駕くんの言葉は私に勇気をくれる。

 最後の職務、(まっと)うしよう。

 私はそう自分に喝を入れながら、いつもの〝駅員の定位置(私の場所)〟へと向かった。
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