クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜

解けた誤解と意外な一面

 着替えを済ませ、退職手続きをした。
 ロッカーから私物を取り出し、社員証を返却したら、私はもう〝朝明台駅主任駅員〟ではなくなる。

 長年着用した駅員の制服と制帽に別れを告げ、朝明台駅の駅舎を後にした。

 結局運転士にはなれなかった。けれど今は、それも祐駕くんと出会うためのきっかけなんだと思える。 
 これから先は、祐駕くんの妻として、彼を支える人として生きていくんだから。

 新たなスタートを感じながら、ふとスマホを見ると、祐駕くんからメッセージが入っていた。

[最後の駅員業務、お疲れ様。こちらは警察の事情聴取を終えて直帰になった。駅前のカフェで待っている]

 祐駕くんにまで、そう言ってもらえるなんて。
 優しい労いの言葉に嬉しさをじんわりと感じながら、駅前のカフェへ向かった。
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