クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「それにね、そもそも私はあの電車に乗る予定じゃなかったのよ」

 エミリアさんは深い溜め息を零した。

「私、プレス側だったの。なのに、パパが無理やりあの電車に乗れるように手配しちゃったのよ。娘が一人じゃ心配だ、とか言って」

 エミリアさんは「過保護すぎるでしょ?」と唇を尖らせる。

「そういうわけだから、何も問題はない。それに、映茉と過ごす時間が増えて、俺は嬉しい」
「私も、エマさんとお話できてとても嬉しかったわ!」

 二人に微笑まれ、なんだかんだで良かったのかなと思えた。

 やがてエミリアさんは改札を入り、私たちに手を振って去って行った。
 そんな彼女を見送りながら、私たちはさりげなく、そっと、互いに手を繋いだ。
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