クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「すごいなぁ、旭飛。出発十五分遅れたのに、到着時刻はほぼ予定通りだって」

 言いながら、祐駕くんを見上げる。すると、祐駕くんは途端に不機嫌そうに眉を寄せていた。

「他の男を褒めるの、禁止。特にアイツは」

 思わず目を見開く。

「俺、案外独占欲強いらしいから」

 はっとする。彼があの日、私にキスマークを残した時、嫉妬してた相手は旭飛だったのかもしれない。

 だけど、これからは祐駕くんの妻として生きていく。
 だから。

「これから先は、祐駕くんだけだよ」

 言いながら、背伸びをして祐駕くんの頬にキスをした。

 祐駕くんは少しだけ驚いた顔をして、けれど、つないだ手にぎゅっと力を込めてくれた。

 自宅へと共に歩く、つかの間の時間。寂しさよりも幸せに胸が満たされてゆく。
 私の選択は、間違っていなかったのだと確信した。
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