クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「怒らない?」
「ああ」

 祐駕くんに即答されたら、白状せざるを得ない。

「初めての時と一緒だな、と思ったの」

 言えば、祐駕くんは急にむっと顔をしかめる。

 ほら、だから言いたくなかったのに。

 そう、思ったのだけれど。

「あの夜は忘れてほしい。恥ずかしすぎる」

 祐駕くんはそう言って、わたしの肩口にぽすっと顔を埋めた。

「え、なんで?」

 淡白な情事に、気持ちがないのかと思ったあの夜。
 恥ずかしいことなんて何もないし、むしろスマートすぎると思っていたくらいなのに。

「素肌を曝け出した映茉が俺の渡したネックレスだけを着けてのが魅力的で――……、堪らずに、早急に果ててしまったんだ」
「え!?」

 勢いよく振り返ると、クールな祐駕くんの顔が真っ赤に染まっている。

 思わず目を見開いた。
 こんな祐駕くんの顔は初めて見た。

「だから忘れて欲しかったんだ」

 けれど、小声で呟くこんな祐駕くんも、今は堪らなく愛しいと思う。

「忘れないよ。今の聞いたら、ますます忘れられない」

 言いながら、祐駕くんの頭をなでたら、ぬうっと伸びてきた祐駕くんの唇が私の頬に触れた。

「じゃあ、今から上書きする」
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