クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「そ、そうだよ。持月くんに憧れてる女の子、いっぱいいた」
「告白されたことは一度もないが?」
「それは持月くんのクールでちょっと近寄りがたい雰囲気とか、複雑な乙女心があったりとかしてですね、……」

 恥ずかしさをごまかすように唇を尖らせるが、やはり持月くんは淡々としていて。

「モテていたか否かの真偽は不明だが、今相手がいないことは事実だ。だから咲多に結婚を申し込んだ」
「そんな、人を抽選かなんかみたいに……」

 はあ、とため息をもらした。私だって、高校時代は彼に憧れていたうちの一人だ。
 けれど、今現実に目の前にいる、十一年ぶりの彼は結婚を『法律上の関係』だとかいう、ロマンのない人。

「ごめん、やっぱり私は、愛のない結婚なんてしたくない。『結婚さえしてくれればそれでいい』人とは結婚できない。そもそもドイツと日本で離れ離れっていうのも嫌だし、私は『幸せな家庭』を築きたい」

 持月くんは、外交官という女性にとって憧れの職業に就いている。
 けれど、私はそれよりも、愛のある幸せな結婚をしたい。

「この歳になって、そういう相手もいないのに、結婚に理想掲げてイタいのは分かってる。でも、私は一緒に笑い合って、一緒にいると安らげるみたいな、そういう温かい家族が欲しいし、結婚するならそういう家族になりたいの」
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