クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 持月くんは顎に手を置き考え始めてしまう。

「な!?」

 思わず大きな声が出てしまった。
 だって、それってそういうことするタイミングってことでしょ!?

 一体持月くんは何考えてるのだろう。彼の頭の中の未来予想図を覗きたい。
 じゃなくて!

「じゃあ、なれなかったら!? 私が思う〝幸せな家族〟に、持月くんができなかったらどうしてくれるのよ!」

 反論しようとして、つい責めるような言い方をしてしまった。まだ、結婚もしていないのに。
 けれど、持月くんはちらりとこちらを見て、淡々と告げた。

「その時は、離婚するか」
「へ?」
「幸せな家族になれなかったら、離婚しよう。財産分与もきちんと応じるし、慰謝料も払う。その時に子供がいたら、養育費も払うと約束する。だから、もしその時は遠慮なく言ってくれ」
「あ、あのねえ!」

 なんで結婚する前提になってるの!?
 と、怒るまもなく、持月くんはそれでいいだろうと言わんばかりに、また食事を始めてしまう。だから私も、目の前のお肉にナイフを入れた。

 お肉を口元に運びながらため息を零すと、右耳元と左耳元で、私の分身二人が語り掛けてきた。
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