クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 やったじゃない、いいタイミング!
 いつかは結婚したいと思ってたでしょ。それに、もうアラサー。出会いのないままここまで来ちゃって、一生独り身の夢破れ駅員っていうのは虚しいじゃない。それに、子供とか考えるとそろそろ結婚しなきゃいけないタイミングでしょ!

 いやいや、何揺れてんの! 彼と結婚して、本当に幸せになれると思ってるの!?

 でも、努力するって言ってくれた。それに、外交官ってことはお金もある。国のために働いてるってことは、信頼を失うようなことはしないはずだよ? それに、もしだめだったら離婚するって保証付き! 今どきバツイチなんて珍しくないし、いいんじゃない?

 でも……ぐうう。

 右耳の結婚反対派が黙ってしまった。

 けれど、本当にいいの? 結婚だよ?

 自問していると、持月くんがナプキンで口を拭いながらこちらを見た。もう、食べ終わってしまったらしい。

「籍は、互いの両親に挨拶してから入れるでいいか?」
「ちょっと待って! 本当に結婚するの?」
「ああ。……ダメか?」
「……」

 先ほど私の中の反対派が黙ってしまったことを考えると、きっと私は持月くんに反論する術がない。だったら、持月くんの『努力』に、賭けてみてもいいのかもしれない。

「……分かった、いいよ」

 顔を上げた。持月くんを、じっと見た。

「私、持月くんと結婚する」
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