クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 手元にあったマッチで蝋燭に火をともし、お線香をあげると持月くんと共に手を合わせた。

 お母さん、あんな風に振舞ってるけれど、本当は寂しいのかもしれないなぁ。不意に、そう思った。

 遺影の中の父は、笑っている。母と父は、バカがつくほどのおしどり夫婦だった。

 定年退職したら、日本一周一緒にするんだと意気込んでいた矢先の心筋症。そのまま、父は帰らない人となった。

 お父さん、私、お母さんとお父さんみたいな夫婦になれるかな。

 まだ手を合わせ目を閉じる持月くんの背中を見ながら、不意に遺影の父に話しかけてしまった。
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