クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 玄関で出迎えてくれたのは、厳格そうな男性と背筋のぴんと伸びた女性。品のある笑みは優しそうで、幾分肩の力が抜けた。

 けれど、玄関には絢爛なシャンデリアが光り輝き、大理石のような階段には赤い絨毯が敷かれている。あまりにも豪華すぎる見た目に、私はどうしても気後れしてしまう。

 自己紹介をして、家に上げていただく。通された和室は丸い窓に障子が張られ、そこから差し込む光が柔らかい。まるでどこかの高級旅館みたいだ、と思いながら、私は持月くんの隣に腰を下ろした。

「私が祐駕くらいの時にはもう結婚していたからね。やっとか、と思ったよ」
「こんなに可愛らしいお相手がいたのなら、早く紹介してくれればよかったのに」

 持月くんのご両親がさっそく口を開き、思わず「ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません」と頭を下げてしまった。

 どうやら、持月くんのご両親も私たちがお付き合いしていたと勘違いしているらしい。
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