クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「正直、ちょっと」

 言いながら申し訳なくて、うつむいてしまう。

「俺がそうさせていることは、分かってるんだが……、咲多の暗い顔は、あまり見たくない」

 その声色は、どこか寂しげだ。

「そうだね、ごめん」

 顔を上げると、持月くんの眉がさっきより困ったようにひそめられている。

「未来を憂いたって、仕方ないもんね!」

 頬に力を入れ、にいっと引き上げた。

「幸せな家族に、なろうな」

 持月くんはそう言うと、優しく微笑みながらワイングラスを軽く掲げる。
 その言葉に、胸がきゅうっとなる。

「うん」

 私もグラスを掲げた。なんとなく、この結婚は間違いじゃなかったんだと、そう思えた。
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