クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 食後のコーヒーも頂き、お腹も満たされた頃。

「帰ろうか」

 と、私が言えば、持月くんは「部屋を取ってあるんだ」と、レストランの下の階へ私を連れ出した。

 レストランで見たのと同じ夜景に広がる、みなとみらい屈指の眺望のホテルの一室。何となく気恥ずかしくて、部屋に入った瞬間から、私はひたすらに夜景を眺めていた。

「すごいね、夜景」
「ああ。俺も、この景色は好きだ」

 持月くんは言いながら、窓際に立つ私の背後に立つ。
 二人きりの部屋、近すぎる距離に、鼓動が高鳴った。

「なぁ」

 持月くんの手が肩に乗り、ピクリと震えた。振り返れば、彼の手にはリボンの結ばれた細長い箱が乗っている。
 持月くんはゆっくりと、その蓋を開けた。

「え、これ……」

 華奢なチェーンに吊り下がる、小粒の上品なジェムストーン。
 婚約指輪よろしく光り輝くそれは、まるで今見ている横浜の夜景をぎゅっと凝縮したようだ。
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