クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 いつの間にか寝てしまったらしい。差し込む朝日に気付いて身体を起こすと、目の前のソファで持月くんがコーヒーカップを傾けていた。

「おはよ」
「あ、おはよ……」

 今朝もスーツを隙なく着こなす持月くん。格好良いけれど、私は彼の顔を見て昨日の夜を思い出してしまった。
 慌てて胸元を隠す。けれど、私の身体は、着た覚えのないナイトウェアに包まれていた。

「まだ朝早い。シャワー浴びるか?」
「うん」

 会話する持月くんがいつも通りで、昨夜の疑惑が確信に変わる。これは、きっと演技なんだ。
 だから、私も、いつも通りに。
 シャワーを浴びながら、私もこの結婚を頑張ろうと思った。

 シャワーから出ると、持月くんは部屋に朝食を頼んでいてくれていた。

「本当はレストランでも良かったんだが、今日、早く出なければならないんだ」
「仕事?」
「ああ」
「そっか、なら私もだから大丈夫だよ!」

 今日は午後から勤務だ。その後宿直で明日は朝番、次が日中勤務で翌日は休み。駅員の仕事は電車の運行に合わせてシフト制で組まれているのだ。
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