クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
【2 異国の空と、近づく心】

求められたのは、なぜ?

「映茉、結婚したって本当か!?」

 それから三日後のもうすぐ退勤時間という頃。同期の運転士、旭飛が駅員室へ飛び込んできた。

「うん」

 社内で名前の変更手続きとかしたけれど、そんなに早く伝わるものなんだ。そう思って旭飛の顔を見ると、彼はなぜかこちらを睨んでいる。

「先越されて羨ましいからって、そんな顔しないでよ」
「……悪い」

 旭飛がそう言った時、ちょうど定時を過ぎたので、パソコンの電源を落として立ち上がる。駅長に「お疲れ様でした」と声をかけ、駅員室を出た。

「でも、なんで急に? お前、彼氏とかいなかったよな?」
「この間の急病人対応してくれた人いたじゃん、彼とね、高校の時にお付き合いしてたの。お互いフリーで、だったらいいじゃんってなって――」

 話しながら、改札内を横切り、改札口まで歩く。宿舎は改札外にあるのだ。
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