クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「ほら私、もうすぐ三十だし、子供欲しいなあとか考えたらそろそろタイムリミットかなって」
「それだけで結婚決めたのか?」
「うん。付き合ってたから、お互いのことはよく知ってるし」

 こんなでまかせ、口から良く出てくるな、と我ながら思う。案外、演技の才能があるかもしれない。

「高校の頃って何年前だよ」
「いいでしょ別に! こういうのはタイミングなんだから! 旭飛も、早くいい人見つかるといいね」

 言いながら、改札口から外に出た。

「なんだよ、それ」

 少し遅れて改札を出た旭飛を振り返った。彼は不満顔の眉間にシワを寄せた。

「なにその顔! あ、分かった負け組の顔だ! 運転士にはなれなかったけど、婚活では勝ちましたよ私!」
「んだよ、俺は――」

 いつもの軽口のようにニッと笑って言ったのに、旭飛はよりムッとして。けれど、言いかけた言葉に「ん?」と首を傾げると、旭飛は私の肩にぽん、と手を置いた。

「結婚式、呼べよ」

 そう言う旭飛の顔は、さっきまでとは打って変わって優しく微笑んでいた。
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