クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 旭飛は宿舎に戻る道中、喋らずに早足で前を歩いていた。「待ってよ」と言えば、「急がねーと旦那様がお待ちだろ?」と返される。

 それもそうだと思いながら、急いで着替えて宿舎を出た。
 のだけれど、またそこでも旭飛に遭遇した。二人で並んで、駅の改札前まで戻る。

「どうしたんだよ、その服」

 旭飛に言われ、思わず自分の姿を見下ろした。
 いつもはジーンズにトレーナーで出勤しているが、今日はワンピースにローヒールのパンプスを履いてきた。
 ついでに髪も簡単にまとめて、メイクまで直してきた。

「だって、今日デー――」

 言おうとした言葉は、旭飛に「やっぱ言わなくていい」と止められてしまった。

「もしかして、どっか変!?」
「……俺は、お前の旦那じゃないから分かんねー」
「何それひどい!」

 にいっと意地悪く微笑まれ、思わずぷうっと頬を膨らませた。

 と、途端にぐいっと何かに腰を引かれた。
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