クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 わ! と、顔を上げれば、祐駕くんがそこにいた。

「映茉、お疲れ様」
「お疲れ様、祐駕くん。ごめんね、お待たせして」
「いや、いい」

 けれど、なぜか祐駕くんの腕は私の腰を掴んだままで。

「じゃあな、お幸せに」

 旭飛がそう言って去って行って、やっと腕を放してくれた。

「いつもそんな恰好で出勤してるのか?」

 解放と同時に、祐駕くんが私の恰好を見ていることに気が付いた。

「ううん! いつもは、ジーンズとか、もっと動きやすい感じなんだけど」

 お洒落してきたのだと告白したようで、恥ずかしい。けれど、祐駕くんは「ふうん」と一言こぼすだけ。やっぱり、私たちの間に愛などないらしい。
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