クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 荷物の大きな祐駕くんに、どこかに移動しようと提案すると、もうレストランを予約してあるっと言われてしまった。

「勝手で悪いとは思ったんだが、待たされるのは好きじゃないんだ。それに、フランクフルト便の時間もある」
「そっか。じゃあ、なおさら待たせてごめんね」
「いや、映茉を待つ時間は嫌いじゃない」

 祐駕くんが優しく微笑むから、思わず私の胸がドキリと鳴ってしまった。

 愛が無いって、分かってるのに!
 
 私たちはそのまま電車に乗り、羽田まで移動した。その間、祐駕くんはしきりにスマホを操作していた。

「お仕事?」
「ああ、そんな感じだ」

 祐駕くんは言いながらも、まだスマホを操作する。その真剣な横顔を見ていると、こちらが申し訳なくなってしまう。

「忙しいのにわざわざごめんね」
「いや、いい。家族なんだから、こういう時に会うのは当たり前だ」

 不意にこちらを向いた祐駕くんの笑顔は、やっぱり優しい。
 これも、きっと〝演技〟だ。分かっているのに、どうしてもときめいてしまう。もう、どうしたらいいのだろう。
< 61 / 251 >

この作品をシェア

pagetop