クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 空港にほど近いホテルのレストランは、飛んで行く飛行機がすぐそこに見える。
 美味しいディナーに舌鼓を打ちながら、私は別れの時が近づいてくるのを感じていた。

「ドイツって遠いよね」

 言えば、「寂しいのか?」と祐駕くんがこちらを向いた。

「そりゃ、ね。結婚したわけだし、家族なのに離れ離れっていうのは、やっぱり寂しいなあって」

 言いながら、無駄なことだと思った。私と祐駕くんの間に、愛はないのだから。

「なんて困るよね、ごめん」

 ため息交じりに告げれば、「いや」と祐駕くん。

「言うか迷ってたんだが……、ドイツ、来るか?」
「え?」
「こっちに越してこいっていうわけじゃなくて、ちょっと観光みたいな感じで」
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