クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際０日な私たちの幸せ演技婚〜

　祐駕くんは淡々と食事を続けながら、言葉を続けた。

「実は、ドイツの環境大臣に俺の結婚が知られたら、次のレセプションでぜひ紹介して欲しいと言われているんだ。一か月後だし、映茉は仕事もあるから、無理にとは言わない。だが、もし日程調整できそうなら、来てもらえると助かる。ドイツ観光の、ついでにでも」

　『ついで』の範疇がおかしい気がするが、ドイツ観光は魅力的だ。

「もし来られるなら、せっかくだから俺もレセプション前には休みをとって、映茉の行きたいところ案内する」
「え、いいの？」

　海外旅行なんて、行ったことない。土地勘もなく言葉も通じない場所に行くのは、ちょっと勇気がいるから。
　けれど、祐駕くんが一緒なら。

「でも、祐駕くん忙しいでしょ？　邪魔じゃない？」
「遠慮はいらない。家族、だろ？」

　祐駕くんはまた、優しく微笑む。それで、私の胸はまた、ドキリと高鳴る。その鼓動を誤魔化すように、私はあわてて口を開いた。