クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 しかし約束をしたところで、祐駕くんとしばしお別れなことに代わりはない。
 食後のコーヒーが運ばれてきて、改めて別れを実感し、少しの寂しさが胸を襲った。

 コーヒーカップに口を付けながら窓の外を行く飛行機を眺めた。もうすぐ、祐駕くんはあれに乗って、ドイツに戻っちゃうんだ。
 家族の繋がりなんて、祐駕くんにはちっぽけなものかもしれないけれど。

「映茉」

 不意に名前を呼ばれ、祐駕くんを振り向いた。その手には、小さなベロアの箱が握られていた。

「わぁ……」

 祐駕くんの手で開かれた小さな箱の中には、小粒の宝石が七粒斜めに埋め込まれた、流線型のデザインの指輪が大小一つずつ、収まっていた。
< 65 / 251 >

この作品をシェア

pagetop