クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 まだ日の昇らない時間。がさっと物音がして、私は目を開いた。

 優しい視線と目が合う。
 身なりを整えた祐駕くんが、ベッドサイドから私の顔を覗いていた。

「悪いな、起こした」
「ずっと、見てたの?」
「ああ。良く寝ていた」

 それは恥ずかしい。急激に顔が火照るが、祐駕くんが優しく微笑むから、私の頬もつい緩む。

「身体、平気か?」

 言われてみれば、少し怠い。股関節も痛む気がする。

 けれど、祐駕くんはもう出発してしまうかもしれない。
 慌てて起き上がろうとしたら、手で制されてしまった。

「まだ寝ていていい。チェックアウトは十時だから」
「でも、祐駕くんはもう出るんでしょ? 明け方の便に変更したって」
「ああ。だが、それは俺のわがままだ。映茉に無理をさせたくはない」

 祐駕くんは言いながら、私の鎖骨を優しくなぞる。そこには、昨夜つけられた赤い痕が、くっきりと残っていた。

「ありがとな。一緒にいてくれて」

 祐駕くんは「おやすみ」と私のおでこにキスをする。
 これは夢かもしれない。そう思いながら、私は再び重くなった瞼に抗えず目を閉じた。
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