クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 お人好し。

 高校時代の彼女の印象だ。
 そんな彼女は、駅員の制服姿で、迷子と思われる子供に笑顔で接している。

 咲多らしいな。

 そんなことを思っていると、不意に目の前をフラフラと黒い影が横切った。

 大丈夫か?

 足取りのおぼつかない男性は、やがて身体を傾ける。

 危ない!

 そう思ったときには、彼はもう線路内に落ちていた。

 慌てて咲多の方を振り向く。
 彼女は手を繋いでいた、迷子と思われる男の子を抱き上げているところだった。

 真剣な表情で、非常停止ボタンへと走り出す彼女は格好良い。

 けど、お前、子供抱えてんだろ。

 そう思ったら、身体が勝手に動いた。彼女に鞄を預け、運転士に手を振り電車を止める。
 それから急病人の元に走り、救護活動を行った。
< 76 / 251 >

この作品をシェア

pagetop