クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 彼女と別れた後、外務本省で研修を受ける。
 休憩中にスマホを見ると、咲多からの留守電が入っていることに気づいた。

 お礼がしたい。
 そう告げる彼女からの留守電の声に、不意に〝結婚〟という言葉が脳裏に浮かんだ。

 あの環境大臣のせいだ。
 そう思うけれど、これはチャンスかもしれない、とも思った。

 きっと苗字が変わっていなかったから、彼女は未婚だろう。
 お人好しなところは、先程の対応を見ても、昔と変わっていないと推測できる。
 
 それに高校の元クラスメイト。あの高校に入れたということは、それなりに頭は切れるはず。
 母親の顔も知っているし信頼できる人だ。それに、英語が喋れるらしい。

 考えれば考えるほど、彼女が〝丁度いい〟と思った。

 だから、彼女に結婚を申し込んだ。
 けれど彼女は、〝幸せな家庭を築きたい〟からと俺の求婚を断る。

 幸せな家庭? そんなの、どうにでもなるだろう。
 彼女の理想があるなら、それを叶えてやればいいだけだ。

 彼女はなぜか少し嫌そうに、けれど俺との結婚を承諾してくれた。
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