クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 彼女の示した、理想の家族像。
 それに近付くために、婚姻届を提出した夜、彼女を抱くためにホテルに誘った。

 けれど、俺が贈ったネックレスをつけた彼女が、俺の瞳にどうしようもなく魅力的に映った。

 俺だけの、特別。

 そう思ったら、胸の中が甘く疼いた。
 彼女の髪をサラリと撫で、似合っていると告げれば、彼女は途端に頬を染める。

 堪らなくなり、思わず背中から抱きしめた。
 正面から抱きしめられない俺は、意気地なしかもしれない。そう思ったけれど、腕に触れた彼女の小さな手に胸が跳ね、顔が熱くなる。

 こんな顔、見られたくない。
 だったら早く、事に及んでしまえばいい。

 まだ俯く彼女をベッドに誘い、服を脱がせてキスを落とした。
 胸元に揺れる、俺の送ったネックレスだけが光を放つ。

 何で俺は、こんなに堪らないんだ?
 自分に自分で問いながら、それでも目の前で俺の熱に浮かされ快楽の表情を見せる彼女に興奮する。

 結果、あっけなく果ててしまったのが恥ずかしくて、シャワーに逃げ込んだ。
 冷たいシャワーを頭から被り、なんとか理性を取り戻す。

 格好悪いな、俺。

 普段は考えないそんなことを、彼女の前では気にしてしまうのが、不思議でならなかった。
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