クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際０日な私たちの幸せ演技婚〜

「俺は、映茉は運転士になる素質あると思うけど」

　旭飛はこちらに憐れみの視線を向ける。

「もういいの。今は、駅員であることが私の誇りだから。ほら、今年度からは主任だし！　出世したし！」

　私は今年の春、出世した。駅長が駅のトップだとすると、主任駅員は二番目。地下鉄への直通運転もしている朝明台駅は都心へのアクセスも良く、大川電鉄の中でも利用客の多い駅だ。その駅の、主任駅員になったのだ。

　けれど、慌てて作った笑顔は、あんまりうまくなかったかもしれない。だから、軽口のつもりで唇を尖らせてみた。

「っていうかそれ、ストレートで運転士になったエリート旭飛に言われたくない」

　定時を過ぎて、パソコンの電源を落としながら冗談交じりに伝えると、旭飛は「悪かった」とこぼした。