クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 伝わるのが早いことに驚いたが、それ以上にこれで厄介事が一つ減ったと安堵の息を漏らした。

『私の娘を遠回しにいつも断っていたのは、日本に可愛いフィアンセがいたからだったんだね。そうならそうと、早く言ってくれればいいものを』
『すみません。結婚がまだだったものですから』
『だが、これで祐駕も既婚者だ。どうだい、今度のパーティーに連れてきておくれよ。可愛い〝奥さん〟を』

 電話越し。朝から陽気なテンションの環境大臣は、きっと俺の結婚を祝福してくれているのだと思う。

 朝からビールでも飲んでいそうだな。

 ふっと笑いが漏れて、そのことに自分で驚いた。いつもなら、面倒くさいとため息を飲み込んでいるだろうに。

 パーティーへの返事は濁し、環境大臣からの電話を切った。
 こればっかりは、自分ひとりで決められるものじゃない。映茉の仕事の都合もある。

 けれど、もし映茉にドイツへ来てもらう口実になるのなら。
 利用させてもらうのも、悪くはない。

 そう思うと、不思議と心が躍った。
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