クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜

現実世界のプリンセス

◇◇◇

 あっという間に一か月が過ぎた。

 あの朝、ホテルの部屋の中、起きた私は一人きりだった。けれど、鏡に映った赤い痕を見て、夜のことが夢じゃなかったのだと安堵した。

 早く会いたい。そんな気持ちで、ワクワクとドキドキを胸に抱え、羽田から飛行機に乗り込んだのは約十二時間前。

 そして今、私は生まれて初めて異国の地へ降り立った。しかも、一人で。
 
 祐駕くんの取ってくれた飛行機の便は、ミュンヘンへの直行便だった。ほとんど寝ていたから覚えていないのだが、起きたら窓ガラスが曇っていて驚いた。

 祐駕くんも言っていたが、どうやらこの時期のドイツはとても寒いらしい。
 ともあれ、入国審査を経て出口へ進む。

 空港内の看板はどれもアルファベットが書いてあるし、右も左も西洋の顔立ちの人ばかりで、ちょっと心細い。しかも、やっぱり寒い!

 空港の中だからそれでも幾分暖かいのだろうけれど、顔に当たる空気が冷たくてブルリと身震いをした。
 その時。
< 84 / 251 >

この作品をシェア

pagetop