クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「映茉、そろそろ起きろ」

 祐駕くんの運転する車はアウトバーンを走っていた。私はいつの間にか寝てしまったらしい。

 祐駕くんの声に目を開けると、空から雪がちらついているのが見えた。

 視線を下げれば、車窓から見えるのは、石畳の道路に建てられたパステルカラーの壁の家々。まるでおとぎ話の中に迷い込んでしまったような、可愛らしい街並みが続いている。その辺に妖精が飛んでいると言われたら、信じてしまいそうだ。

「フュッセンだ。ここでお昼と取ってから、と思ったんだけれど、どう?」
「すごくいい!」

 思わず前のめりで答えてしまった。そんな私に祐駕くんはクスリと笑って、車を停めた。
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