クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「ごめん、一人でテンション上がっちゃって。祐駕くんはこっちに住んでるんだもんね、見慣れた景色でしょ?」
「いや、この辺りは滅多に来ないから、俺も新鮮で楽しい」

 言いながら、祐駕くんは持っていたダウンジャケットを着こんだ。

「ロマンチック街道の終着点としても有名な街なんだ。昨今のドイツは観光に力を入れているから、こういうところもどんどん整備されている」

 へえ、と思いながら、私もマフラーを巻いて、車を降りる。

 東京の真冬のような寒さが足裏からやってきて、思わずブルリと震えた。けれど、同時にこの美しい街並みをずっと見ていたい衝動にも駆られた。

「すごい、本当に素敵な場所……」

 だまし絵のように描かれた出窓の壁画にうっとりしていると、不意に祐駕くんに腰を抱き寄せられた。

「こっちの方が、温かい」
「そ、そうだね」

 祐駕くんの温かさよりも、上がった自分の熱を感じてしまった。
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