クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「それじゃ危ない」
「あ、ごめん」

 差し出された手に自分の手を乗せると、祐駕くんはそのまま私の手を包んだ。

「やっぱり冷えてるな。雪もちらついてるし、今夜はもっと寒くなる」
「あ、うん……」

 ボーっとしてしまい、返事が適当になってしまった。

「どうした?」
「何でもない!」

 お城の前で馬車から降りる。そんなシチュエーションでのエスコート。まさか、王子様みたいだと思った、だなんて言えない。
 祐駕くんは引き換えてくれたチケットを私に手渡しながら、「ガイドは俺でいいか?」と聞いてくる。

「もちろん!」

 私は目の前に(そび)える西洋の巨城を前に、王子様の手を握る手に力を込めた。
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