クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 王族というのは考えることが分からない。お城の中は白鳥のような外観とは異なり、金が多用されどこもかしこも輝いている。それでも落ち着いて見えるのは、少し暗めの色味が影響しているのだと思う。

 随所に絵画があしらわれ、どの部屋にもシャンデリアがぶら下がっているが、絢爛な内装はどこか物悲しさも感じる。

 祐駕くんはそれぞれの部屋を解説しながら、私の手を引き城内を案内してくれた。

 博識な彼のガイドに、へえ、と、知見を深めながら歩いてゆくと、屋内テラスへ出た。

 白鳥の描かれた大きなガラス戸の向こうには、放牧地と湖が望める。
 その向こうは、先ほどいたフュッセンの街らしい。粉雪のちらつく美しいバイエルンの景色。綺麗だなぁと眺めていると、祐駕くんがふと口を開いた。
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