クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 顔が熱い。というか、全身が熱い。
 祐駕くんってこんなキャラだっけ!?

 目をパチパチさせ固まっていると、祐駕くんは楽しそうに口元をほころばせ立ち上がる。

「――という、舞踏会をするイメージがある」

 そ、そうだよね。まさか本当に踊るわけはない。

 周りの視線から隠れるように、ぽーっと湯気が出てきそうな頭を亀のごとく引っ込めながら、その後もクールに説明を続ける祐駕くんに必死に耳を傾ける。

 この柱は御影石だとか、大きな燭台は真鍮に金メッキなのだとか説明してくれるけれど、私の耳には右から左に抜けていく。

 その代わりに、繋いだ手から伝わる彼の体温に、胸がドクドクと鳴る音ばかりが聞こえて仕方なかった。

 お土産を買い、お城を出る。
 けれど、何となく離れがたくなって、もう一度お城を振り返った。

「満足いただけましたか、プリンセス」

 感動に浸る私の腰を抱き寄せ、祐駕くんは唐突に王子ぶる。そんな祐駕くんに、私はときめきっぱなしだ。
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