クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
 バスでフュッセンに戻り、祐駕くんの運転でミュンヘンの市街地まで戻ってきた。

 祐駕くんの運転はとても静かで穏やか。あろうことか、私はまた眠ってしまったらしい。

 不意に目が覚め、ステアリングを握る祐駕くんが目に入り、慌てて謝った。

「また寝ちゃった! ごめん」

 祐駕くんはそんな私に、クスクス笑った。

「構わない。むしろ、長いフライトで疲れてるのに、強行スケジュールで悪いな」

 明日はベルリンに戻り、夜のレセプションに出席する。明後日には、祐駕くんは仕事があるから、そこでお別れだ。

 一人で観光しようかとも思ったけれど、知らない土地に一人では心細いので帰国することにしている。

「ううん、観光はついでみたいなものだって思ってるから。むしろ、わざわざ時間作ってくれてありがとう」

 言えば、祐駕くんの右手が頭に伸びてくる。ポンポン、と優しく触れられ、祐駕くんは手をステアリングに戻した。

「もうすぐ、ミュンヘンだからな。お待ちかねの、クリスマスマーケットだ」
「うん!」
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