クールなエリート外交官の独占欲に火がついて 〜交際0日な私たちの幸せ演技婚〜
「本当にすごい、こんな素敵な部屋なんて」

 ソファの上、祐駕くんの隣。改めて部屋を見回せば、祐駕くんは私の腰を抱き寄せた。

「映茉と初めての、小旅行だからな」

 突然の距離にドクリと胸が鳴る。

「祐駕くん……」

 彼の方を振り向く。部屋内に甘い空気が漂う。

 これ以上ドキドキしたら、私――

 こめかみにキスを落とされ、思わず身体を傾け祐駕くんから距離を取った。
 不意に、一ヶ月前の色事を思いだしてしまったのだ。

 彼の情熱的な姿が脳裏に浮かび、ごまかすように慌ててシャンパンを飲み干し立ち上がる。

「クリスマスマーケット、早く行こう! グリューワイン、楽しみなんだ!」

 祐駕くんの手を引っ張ったけれど、恥ずかしくてしょうがない。

「ああ、そうだったな」

 そう言う祐駕くんの余裕の笑みは悔しかったけれど、同時に胸がいっぱいだった。
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