《番外編》愛し愛され愛を知る。
「――そうですか、悠真がそんな事を」
「悪いな、変な影響与えちまって」
「いえ、そんな……」
「悠真の事もあるし、近いうちにこれは消そうと思う」
「え?」
「この先悠真が成長するにつれて印象も変わるだろうから、これがいけないモノだと分かってくれればいいが、憧れを抱いたままで同じ事をしちまったら困るだろ。だから……」

 そんな理仁の言葉に真彩は、

「私は、無理に消す必要は無いと思います。仮に悠真が同じ事をしたとしても、大人になって、自分で考えてやる事ならばそれを尊重する。私はそう考えます」
「いやいや、そりゃ駄目だろ。つーか、真彩だって本当は嫌だろ? これがあるの」
「私は、嫌だなんて思いません。親子参観や人に多い場所に行く際はいつも周りに気を遣って包帯で隠しているし、その、初めて会ってそれを見た時は、怖い人だ、関わっちゃいけない人だと思いはしましたけど、今はもう全然。これだって、理仁さんの一部ですから」

 真彩の言葉が意外だったのか、理仁は面を食らっていた。

「お前は、本当にいい女だな」
「え? 何ですかいきなり」
「そんな事言えるのは真彩だけだ。これを認めてもらえて、俺は嬉しいよ」

 横に並んで座っていた真彩の肩を抱くと、そのまま彼女の顎を持ち上げてキスをする。

「――ん、」

 理仁は表情にこそあまり出ないものの、大切にしてきた刺青を自分の一部と認めて貰えていた事に感動していた。

 真彩にしても悠真にしても、自分が大切にしているモノを認めてくれている、その事実が、何よりも嬉しかったのか、理仁の表情はいつも以上に綻んでいた。



 ―END―
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