《番外編》愛し愛され愛を知る。
「ほお? 相手はどんな女だったんだ?」
「えっと、髪は長くて黒髪で、何かこう、儚げな感じでお嬢様っぽくて……大人しそうな人でした!」
「それで、二人はどんな様子だったんだ?」
「そうっスね……ぎこちないというか、何というか……互いに少し距離がありました!」

 朔の話を要約すると、繁華街で翔と女性が共に歩いていた。相手はどこか良いところのお嬢様で、二人は付き合いたてなのかぎこちない様子で距離もあった――との事らしい。

「あれ? その女の人って……」

 と、ここで、話を聞いていた真彩は何か思う事があったのか口を開く。

 真彩の言いたい事が分かった俺は彼女の言葉に被るように頷きながら「そうだ」と同調する。

「朔、お前は俺の話を聞いて無かったのか? 名鳥組若頭の一人娘、名鳥(なとり) 由恵(ゆえ)のボディーガードを任されて、それを翔が担当してんだろーが。一緒居るのは任務でだよ、阿呆が」
「え!? あ、そっか! そういえばそうでした! 何だ、そっかぁ、そうだよなぁ、兄貴が女と一緒なんて、任務以外あり得ないよなぁ」

 俺の言葉に納得した朔は一人で何か言っているがそれはまあ置いておくとして、しかし妙だ、今日は翔の担当じゃ無かったはずだ。

「…………」
「理仁さん? どうかしましたか?」

 黙り込んでいた俺を心配した真彩が声を掛けてくる。

「いや、何でも無い。悪いが仕事の用事を思い出した、ちょっと電話してくる」
「あ、はい。分かりました」

 少し思う事があった俺は真彩と朔を部屋に残し、仕事部屋として使っている以前の自室へ向かって行った。
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