《番外編》愛し愛され愛を知る。
『――もしもし』
「翔か。お前今どこに居る?」
『今は……繁華街に来ています』
「ほう? 一人でか?」
『いえ、その……名鳥組若頭の令嬢の由恵さんと一緒です』
「今日はお前の担当じゃねぇよな?」
『そうなんですが、彼女の方から直接連絡がありまして、急遽同行を頼まれまして……』
「そうか。ならば仕方ねぇな。どうやら名鳥のお嬢様は翔の事がお気に入りらしいな」
『いえ、そのような事は……』
「まあいい、帰って来たら話があるから直接俺のところへ来い。分かったな」
『はい、分かりました。それでは失礼します』

 翔に電話をした俺は何となくだが、二人は普段から任務以外での交流があると悟った。


 その夜。

「兄貴、今帰りました」
「おう、入れ」
「失礼します」

 夕食と悠真や理真の風呂を終えた俺は仕事部屋に篭り、持って帰ってきていた仕事をこなしながら翔の帰りを待っていた。

「あの、話というのは……」

 帰るなり来るよう呼ばれた事もあって、何かやってしまって叱られるのか、それとも任務を言い付けられるのか構えている様子の翔。

 俺が呼んだのは他でもない。例の令嬢との件をもう少し詳しく聞く為だ。

「まあそこに座れ」
「はい、失礼します」

 ひとまずソファーに座るよう促すと、小さく頷いて座った翔の向かい側に腰を降ろして本題に入る事にした。
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