俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
「モータースポーツには最高峰と言われる競技が3つあって、1つが『F1』、2つ目が『WRC』、3つ目が『WEC』と呼ばれるFIAが主催する競技」
「『WRC』は資料で勉強したので何となく分かります。タイムアタックでコースを走る競技ですよね」
「そう、市販車を規定範囲内で改造したもので競うんだけど、サーキットと違って舗装されてないコースも多い」
「砂埃の中を疾走する映像を沢山観ました」
羽禾は西野から借りた資料動画の中にあったWRCの映像を思い出していた。
(彼の父親がその選手だったなんて…)
「『WEC』というのは6時間以上の耐久レースのことを言うんだけど、有名なのはル・マンの24時間耐久レースだな」
「あっ、知ってます!鉄人レース!!」
「それそれ。耐久レースの時間によってポイントが決められていて、F1と一緒で累計ポイントでチャンピオンが決まる」
「……」
「俺の父親は、そのトリプルクラウンを目指してたそうだ」
(1つの競技で頂点に立つのも険しい道のりなのに、3つ全てで頂点に立つのが夢だなんて……)
「F1は競技年齢が一番低くて、幼い頃はカートで鍛えて、F4、F3、F2とクラスが上がると共に必要なライセンスも取らなければならない」
「……」
「だから、とりあえずはF1で頂点取って、その先があるなら、父親が目指した世界を見るのもいいかなと思ったんだ」
(あぁ、そうか。未婚だから『司波』は母親の姓なのだろう。日本人ドライバーで活躍していたのなら、彼を調べてすぐに辿り着くはずだもの)