俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「Yeah!Is this habanero juice ?!」(おいっ、これハバネロジュースだろ?!)
「What?」(何言ってんだ?)
「I can't drink.」(ドリンクが出て来ねーぞ)
「Why?」(何で?)
「I don't know!」(知るかよっ)
「Did you press the switch?」(スイッチ押してる?)
「Yeahhhhh~!」(てめぇ、喧嘩売ってんのか!)

 何度もドリンクボタンを押してるのに、一向にパウチからドリンクが出て来ない。
 F1のマシンは、ドリンクボタンを押している時だけ飲み物が出てくる仕様なのだ。

 レース前のやり取りがあったから、パウチから飲み物が出て来ないことにブチ切れた瑛弦。
 
 オープンカーとはいえ、シートのすぐ後ろにエンジンを積んでいて、シート越しに伝わる温度は60度近い。
しかも、耐火スーツを身に纏い、フルフェイスの状態のドライバーは、1時間半で3キロ以上の水分を失うと言われている。

 基は、すぐさまピットクルーに確認する。
 もちろん、基がどろっどろのハバネロジュースをセットしたわけではない。

「Sorry……, we forgot to connect.」(すまない、ケーブルを繋ぎ忘れた)
「Destroy the pit box!」(ピットに突っ込むぞ!)

 絶対にあってはならないことなのだが、エンジンやタイヤ、空力設定に気が取られがちで、稀にこういう初歩的なミスが起こる。
 対処法はもちろん、ピットインしてケーブルを繋げなければならず……タイム的に大ダメージだ。
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