俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「何か、酒飲むか?」
「今日は止めておきます」
「今日も頭痛がするのか?」
「いえ、今日はそれほどでも」

 海外を頻繁に行き来する羽禾にとって、気圧と時差と睡眠は最大の問題でもある。
 
「瑛弦さん、ここにちょっと座って貰えますか?」
「ん?……これでいいか?」
「はい」

 シャワーを浴び終えた瑛弦は、髪をタオルで拭きながらリビングのソファに腰を下ろした。

「少しだけ、じっとしてて下さいね」
「あ?」

 羽禾は瑛弦の足下に膝をつき、手にしていた物を瑛弦の足へと。

「ちょっと早いんですけど、バースデープレゼントです」
「……アンクレット?」
「はい。……ジャーン、なんとお揃いです♪」

 先にシャワーを浴び終えている羽禾の足首に、自分のものと色違いのものが着けられている。
 レザーに小さなシルバープレートが結ばれていて、そこに2色の石があしらわれている。
 お互いの誕生石のようだ。

「こういうの嫌でしたか?」
「いや、シンプルだし、いんじゃね」

 束縛するようなものを避けて来た瑛弦にとって、羽禾からのプレゼントは不意打ちのようなものだが、意外にもすんなりと受け入れることができた。

「もしかして、今日これ買いに行ってたのか?」
「えっ、何で分かったんですか?」
「何となく?」

 基と羽禾が一緒にいた意味が漸く理解できた。
 シンプルなものが好きな瑛弦の好みを熟知している基が、羽禾にアドバイスしたのだろうと。
 
「んっ……髪…乾かさないとっ…」
「ほっときゃ乾く」
「…ッ……ぁっ」

 羽禾を抱え上げ、自身の膝の上に座らせ、熱く唇を塞いだ。
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