俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う
*
「西野さんっ!」
「おっ、どうした?」
「ちょっとお話があるんですが…」
シンガポールGP2日目の深夜(シンガポールは全日程夜間に行われる)。
夜間の予選を終え、何かと慌ただしい中、羽禾は意を決して西野に声をかけた。
「相談事か?」
「……報告、です」
「おおおおっ、遂に結婚か?!」
「違いますっ!どうしてそうなるんですか」
「報告と言ったら、それしかないだろ」
「……」
西野さんには少し前に、瑛弦と付き合っていることを打ち明けてある。
というよりも、『Blitz』メンバーが事あるごとに茶化すから、さすがの西野さんでも気付いたらしい。
「実は……――」
羽禾は病気のことを西野に打ち明けた。
日本を発つ前に野口部長には報告してあり、今後のことも踏まえて、西野に報告するように言われたのだ。
いつ病気が悪化するか分からないし、生放送中に具合が悪くなるかもしれないからだ。
最悪の事態を考え、事前に対処すべきことをするのが社会人としてのマナー。
中継車にいるスタッフと打ち合わせをしていた西野は、パドック(トランスポーターが並んでいる場所)の一角で羽禾から打ち明けられたことをのみ込むので必死だ。
「今、具合は?」
「落ち着いてます」
「前から頭痛や眩暈があったのもそれが原因か?」
「……はい」
「マジか…。俺がもっと早くに気付いてれば…」
「西野さんのせいじゃありませんよ。全て自己責任です」
申し訳なさそうに眉根を下げる西野に、羽禾は頭を下げた。
「シーズンが終わり次第、日本で治療を受けますが、ここに戻って来れるかは分かりません」
「……」
「あと2カ月、悔いの残らぬよう一生懸命頑張りますので、温かく見守って下さいっ」
「水臭いこと言うな。俺にとったら可愛い妹みたいなもんなんだから」
「西野さんっ!」
「おっ、どうした?」
「ちょっとお話があるんですが…」
シンガポールGP2日目の深夜(シンガポールは全日程夜間に行われる)。
夜間の予選を終え、何かと慌ただしい中、羽禾は意を決して西野に声をかけた。
「相談事か?」
「……報告、です」
「おおおおっ、遂に結婚か?!」
「違いますっ!どうしてそうなるんですか」
「報告と言ったら、それしかないだろ」
「……」
西野さんには少し前に、瑛弦と付き合っていることを打ち明けてある。
というよりも、『Blitz』メンバーが事あるごとに茶化すから、さすがの西野さんでも気付いたらしい。
「実は……――」
羽禾は病気のことを西野に打ち明けた。
日本を発つ前に野口部長には報告してあり、今後のことも踏まえて、西野に報告するように言われたのだ。
いつ病気が悪化するか分からないし、生放送中に具合が悪くなるかもしれないからだ。
最悪の事態を考え、事前に対処すべきことをするのが社会人としてのマナー。
中継車にいるスタッフと打ち合わせをしていた西野は、パドック(トランスポーターが並んでいる場所)の一角で羽禾から打ち明けられたことをのみ込むので必死だ。
「今、具合は?」
「落ち着いてます」
「前から頭痛や眩暈があったのもそれが原因か?」
「……はい」
「マジか…。俺がもっと早くに気付いてれば…」
「西野さんのせいじゃありませんよ。全て自己責任です」
申し訳なさそうに眉根を下げる西野に、羽禾は頭を下げた。
「シーズンが終わり次第、日本で治療を受けますが、ここに戻って来れるかは分かりません」
「……」
「あと2カ月、悔いの残らぬよう一生懸命頑張りますので、温かく見守って下さいっ」
「水臭いこと言うな。俺にとったら可愛い妹みたいなもんなんだから」