俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う

 車に戻った瑛弦と羽禾。
 もこもことしたダッフルコートにマフラーを装備している羽禾だが、鼻先が少し赤く色づいている。
 瑛弦はエアコンの温度をMAXにして、自分の息を吹きかけた手で羽禾の頬を優しく包み込む。

「手袋は?」
「ポケットに入ってます」
「意味ね―じゃん」
「だって、汚れちゃうから」
「洗えばいいだろ」
「それでも」
「じゃあ、別のを買ってやるから気にせず使え」
「……ん」

 以前、インラインスケートの練習をしていた時に手先が冷たいことに気付いた瑛弦が、その後すぐに手袋を買ってくれた。
 ベージュカラーにリボンがあしらわれているカシミアの手袋。
 高級品だし、石集めで汚したら大変だと思ってポケットにしまっていたのだ。

「なぁ」
「はい?」
「さっきの石の一番上に乗っかってた赤いの…」
「あっ、気づきました?」
「お前、行く先々でマーキングするけど、必ず一番上に小さくて赤い石を乗せるよな」
「フフッ、ケーキみたいで可愛いでしょ♪」
「ケーキ?」
「赤いのが苺に見えませんか?」
「……見えなくもねーな」
「ウフフッ、おまじないです♪」
「は?……怖ぇーよ」
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